研究概要 |
アミノ酸からなるポリマーは生医学分野や食品分野での応用が期待されることから、材料開発の観点からの研究が活発に行われてきた。チロシンはフェノール基を有するアミノ酸であることから酸化的カップリングによりポリマー化が可能と思われる。しかし、チロシンは水をはじめとする溶媒に対する溶解性が極めて低い。そこで、水溶性のチロシンエステル塩酸塩を新規モノマーとして取り上げ、ペルオキシダーゼ触媒による酸化重合を検討した。生成ポリマーはペプチド結合を介するタンパク質と異なる新しいポリアミノ酸である。 重合は触媒に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用い、緩衝液中で行った。モノマーにはD体、L体、D,L体のメチルエステルとL体のエチルエステルを用いた。1.0Mトリス緩衝液(pH7.6)中での重合では反応中に生成物が淡黄色沈殿として析出した。メチルエステルのD体とL体ではほぼ等しい重合結果が得られたことから、本重合にはモノマーのキラリティーは影響を及ぼさないことがわかった。また、モノマー量の増大に伴い、収率も増大した。メチルエステルに関してもD体、L体では同様の挙動が見られたが、D,L体ではモノマー濃度の影響をあまり受けなかった。 次に生成ポリマーの加水分解を検討した。ポリマーを1M水酸化ナトリウム水溶液中、60℃で24時間反応させた。生成物は塩酸で中和後、透析により精製した(収率40%)。IRよりエステル基が加水分解されたことがわかった。生成ポリチロシンは水溶性であった。
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