初年度である12年度においては、1.固相重合系を探索するための多数のモノマーの合成とその酸塩基反応による塩形成、2.塩の再結晶による単結晶作成とモノマーの分子配列の検討について中心に研究を行った。また一部のモノマーについて光重合を検討した。 1.モノマーの合成および酸塩基反応による塩形成 ジエンモノマーは対応するアルデヒドと酢酸エステルの亜りん酸エステルとのWittig-Honer反応により合成した。またトリエンも同様な反応で簡単に合成することができた。生成したジエンおよびトリエンを有するカルボン酸および市販のビニル基をもつカルボン酸と1-ナフチルアミンを作用させ、塩を形成させた。塩の形成は核磁気共鳴や赤外吸収などで同定した。アミン成分は1-ナフチルアミンに固定して塩の合成を行った。 2.単結晶作成およびモノマー分子配列の検討 1-ナフチルアミン塩を様々な有機溶媒から再結晶させ、単結晶を作成した。そのうち、クロトン酸、メタクリル酸、5-メチルソルビン酸、オクタトリエン酸などの塩が単結晶が得られた。X線構造解析を行った。その結果、いずれの塩も2次元に広がる水素結合ネットワークにより同じ集合体を形成していた。特に1-ナフチルアンモニウム基はいずれも同じへリングボーン型の芳香環のスタックを形成していた。酸成分のアルキル鎖の鎖長によって層構造の面間隔が異なっているだけであった。この結果、1-ナフチルアンモニウムが硬い結晶構造を形成する特別な分子構造であることを明らかにすることができた。 これらの成果をもとにして次年度では固相重合系を検討し、固相重合の一般化を検討する。
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