本研究では、タンパク質骨格を利用して2種類の人工機能基を精密に配置した全く新しい機能性高分子の合成を目的としている。 まず、2種類の人工機能基をそれぞれ側鎖に有する2種類の非天然アミノ酸をタンパク質の特定部位へ導入する手法について検討を行なった。従来の4塩基コドンAGGUとCGGGを用いる方法では、あまり効率良く導入を行なうことが出来なかったため、新たな4塩基コドンの探索を行なった。新たに9種類の4塩基コドンについて検討した結果、グリシンのコドンGGGに1塩基付加したものが、非常に効率良く非天然アミノ酸の導入を行なえることがわかった。このうちの4塩基コドンGGGUとCGGGを2つ同時に使用することで、従来法に比べ約3倍の効率で、2種類の非天然アミノ酸を導入したタンパク質を合成することができた。 この効率的な導入法を用いて、ストレプトアビジン中での電子ドナーから電子アクセプターへの光誘起電子移動反応について検討を行なった。まず、電子ドナーとなる非天然アミノ酸(アントラニル酸修飾ジアミノプロピオン酸)を合成し、ストレプトアビジンの様々な部位へ導入し、そのビオチン結合活性を確認した。結合活性が保持される、すなわち立体構造が保持される部位へ電子ドナーを導入しておき、さらにその近傍に電子アクセプターとしてニトロフェニルアラニンを導入した。それらの蛍光分析より、84位へ電子ドナー、54位へ電子アクセプターを導入した場合、約50%の蛍光消光が観察された。また52位へ電子ドナー、84位へ電子アクセプターを導入した場合は、約80%の蛍光消光が観察され、これらの部位間で効率的な電子移動が起きていることが示された。 さらに、蛍光エネルギー移動のための非天然アミノ酸の合成とタンパク質への導入についても検討を行なった。
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