研究概要 |
(1)光学的等方性溶媒キャストフィルムの調製 本研究では、現在までに用いた試料の中でSHG活性が一番高い、ヒドロキシ安息香酸をベースとしたポリエステルを用いた。この試料はサーモトロピック性であるが、液晶-液体転移温度が分解点以上であり、加熱により液体状態を実現できない。申請者は、既報告の方法で、溶媒キャスト法により光学的に等方的な膜を作製し、このフィルムを等方相とし、下記の実験を行った。 (2)等方相からの液晶化、極性構造の発現過程の測定 上記で調製したフィルムを液晶温度に昇温すると、液晶相が発現する。この過程を偏光顕微鏡観察、DSC、光散乱測定、広角X線回折で測定した。偏光顕微鏡観察を定量的に扱うために、透過光強度測定を行った。液晶化に伴う極性構造の発現を、Nd:YAGレーザーを用いたSHG強度変化で捉えることに成功した。 (3)延伸処理したキャストフィルムにおける液晶化、極性構造の発現過程の測定 申請者は、液晶化により分子長軸方位が揃うことで、双極子-双極子相互作用が大きくなり極性構造が安定化すると考えている。極性構造の発現は、分子が長軸方向を変えずに並進運動し、同じ向きの双極子を持ったもの同士がレーザーの波長オーダー以上の大きさを持ったドメインを形成する。これを実証するために、キャストフィルムを延伸し、あらかじめ分子長軸方位を揃えたフィルムを液晶温度に昇温し、極性構造発現過程をSHG強度により捉え、かつ配向の乱れが生じないことを広角X線回折で保証する。しかしながら、分子の配向が起こる前にキャストフィルムが破断してしてしまい、現在のところ,計画時に想定している結果は得られていない。
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