コロイド結晶の弾性率は極めて小さく外場に応じて容易に変形する。本研究の目的はミクロな結晶構造とマクロな粘弾性との関係に注目して、コロイド分散液におけるレオオプティクス現象の基礎的知見を得ることを目的とした。コロイダルシリカ粒子(粒径110nmおよび300nm)を用いた。二重円筒型回転レオメータを用い、コロイド結晶の粘弾性測定と同時に反射スペクトル測定を行った。 歪み量依存性:歪み量の増加とともに応力が直線的に増加し、降伏した後、歪み量に依らず一定の応力を示した。降伏点より小さい歪み量ではゴムのような弾性体として振る舞うことが明らかとなった。反射スペクトルはシングルピークを示した。降伏点より小さい歪み量ではピークに変化が見られなかったが降伏後、ピーク波長及びピーク強度に変化が現れた。粒子濃度に関わらず、ピーク波長が低波長側に転移、つまり粒子間距離が小さくなった。このときピーク強度が減少、つまり部分融解が発生することが明らかとなった。 歪み速度依存性:粒子濃度が高いほど応力は大きくなった。また歪み速度に依らず一定の応力を示した。このことはサンプルが固体構造を形成していることを示している。粒子濃度が小さい場合には応力が小さくなるとともに、歪み速度の増加につれて応力が増加し液体構造になっていることを示している。粒子濃度に依らずおよそ0.1s^<-1>の歪み速度において転移的な部分融解の増加が観察された。また部分融解と同時に、結晶が若干ルーズになることが明らかとなった。 結晶構造とレオロジー特性:歪みが小さく降伏点に達していない場合、コロイド結晶は歪むものの、結晶構造を保持することが分かる。一方降伏点を越える大変形下においては全ての粒子濃度において粒子間距離が減少する傾向があるが、これは電気二重層が柔らかく炎形に大きく歪むためと考えられる。またこの時応力が歪み量に依存せず一定値を示すことから、炎形に歪みながら格子面でスライディングを起こしていると考えられる。大変形下における転移的な部分融解は、強い電気二重層へのストレスのために結晶の部分融解が促進され、よりルーズな結晶が形成されていることを示唆している。変形による結晶構造の変化とレオロジー特性との関連が電気二重層の変形、結晶格子面のスライディング、結晶の部分融解により理解された。
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