研究概要 |
本年度は、研究計画に基づいて次の項目について検討を行った。 ・三次元細線化アルゴリズムの開発: 本研究では、高分子多成分系が相転移に伴って作る相分離構造の形態学的な特徴を調べることが大きな目標である。本年度は、構造の形態に関する基礎的な知見を得るための三次元細線化アルゴリズムの開発を行った。テスト画像として、形態学的な構造パラメータである、分岐点での分岐数・分岐点間の距離などが既知である周期的極小曲面を用い、このアルゴリズムの精度検定を行った。 ・海綿骨の三次元構造の微分幾何学的視点からの評価: 本研究では、生体が作り出す軽量かつ高強度の構造のモデルとして、骨の内部構造(海面骨骨微細構造)の三次元構造を取り上げる。従来、医学分野では、海綿骨の骨形態計測において、平面が多い構造(プレート状構造)、あるいはシリンダーが多い構造(ロッド状構造)のモデルを仮定することが妥当とされてきた。この2つの形態は、微分幾何学的には楕円曲面に分類される。そこで、エックス線計算機トモグラフィーにより得られた海綿骨の三次元像に対して骨梁表面の曲率分布測定を行った。その結果,骨梁表面は、これまでの医学界の常識に反して,平均的に「馬の鞍」のような双曲面であることが分かった。これに対して、ポリマーブレンドが相転移の際に作る相分離構造の界面は、平均的に双曲面であることが既に分かっている。すなわち、海綿骨とポリマーブレンドの相分離構造の間に類似点がある可能性が大きいことが判明した。
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