研究計画の初年度に当たる平成12年度は、ポリ(スチレン-d_8)(D)及びポリ(2-ビニルピリジン)(P)から成るD/Pホモポリマー界面とPDP三元ブロック共重合体のミクロ相分離界面を中心に複合高分子の界面の構造を中性子反射率(NR)法を駆使して詳細に調べ比較を行なった。スピンコーティング法を利用して調製したD/Pホモポリマー二層薄膜の鏡面反射率測定により、室温における比較的分子量の大きなD/Pホモポリマーの界面厚みは約4.4nmと見積もられた。この値は平均場理論による予測値より明らかに大きく、ホモポリマー界面上に熱的な揺らぎ(表面張力波)の存在を考慮することにより定量的に説明することが出来た。D/Pホモポリマー界面については構成分子の分子量、温度の異なる条件下においても既にNR測定を始めており現在そのデータ解析を進めている。また、交互ラメラ構造を示すPDP三元ブロック共重合体(中央Dブロック鎖の体積分率φ_D:0.34、0.50、0.59)薄膜について鏡面反射率測定を行ない、φ_Dが低いほど形成されるラメラ構造の膜表面に対して平行な方向の配向性が悪くなることが明らかになった。ラメラ構造の配向性の比較的高いPDP(φ_D:0.50、0.59)については、ミクロ相分離界面の厚みは組成の違いに依らずほぼ一定に約3.1nmと見積もられ、同じ構成成分から成るDP二元ブロック共重合体とほぼ同じ界面の厚みを示すことが判った。反射率測定により見積もられたPDPのミクロ相分離界面の厚みは、平均場理論による強偏析条件下での予測値より大きく、ブロック鎖が繋がっている効果と界面の熱的な揺らぎの効果の両者を考慮することにより定量的に説明することができた。
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