昨年度は、T800H/3900-2と呼ばれるタイプの層間靭性強化CFRPの、各層間に形成される約30μmの極めて薄い層間樹脂層について、その片面を表出させて超音波反射率を測定することで、一般的な静的試験法では測定の困難な樹脂層の物性値を同定する手法を確立した。 そこで本年度は、その同定を行う際に必要となる、樹脂層の基盤層であるCFRP層の弾性係数を、超音波反射率から同定する方法の確立を行った。まず、そのための試験片として、層間靭性強化CFRP(T800H/3900-2)のプリプレグ1枚のみで成型し、その両面から樹脂層を除去してCFRP一層のみを残したものを作成した。次に、弾性係数の同定を行うためには、試験片の厚さを正確に把握しておく必要がある。よって超音波を利用し、厚さの絶対値を水中の音速を基準にして測定する新たな手法を確立した。その後、試験片表面で超音波反射率の測定を行った。このCFRP一層のみの試験片は厚さが約140μmと薄いため、測定した反射率上には、漏洩ラム波の励起によって多数の極小点からなる曲線が現れていた。そこで、このCFRP薄板を面外等方性と仮定し、引張試験によって求めた繊維方向の弾性率を用いながら、反射率の測定面と弾性係数の関係をうまく利用することで、それらの反射率上の極小点から5成分全ての弾性係数を逆問題で特定の値に同定することができた。さらに、反射率の計算結果は測定結果を良く再現していた。 その後、得られたCFRP層の全弾性係数を用い、その上に形成されている樹脂層の弾性係数の同定を行ったところ、より正確に樹脂層の物性値を得ることが可能となった。
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