研究概要 |
本研究においては,パルス幅が5nsec程度のQスイッチNd:YAGレーザの基本波(波長1064nm),第2高調波(波長532nm),第3高調波(波長355nm)を用いて,パルス幅,照射エネルギ密度,パルス照射数を変化させてサファイヤに照射したときの加工形状ならびに熱影響について評価し,より高品質・高精度の形状加工を実現する加工条件について検討した.加工痕については,走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡(AFM)を用いて寸法・形状精度ならびに溶融・堆積物の有無,すなわち加工品質について評価した,レーザ加工に伴う照射部および周辺の熱影響については,熱燐酸(200℃)で試料を化学エッチングした後に表面をSEMおよびAFMで観察することで評価した.その結果,第3高調波を用いた場合,その他の波長が長い場合に比べて,照射部および周辺部における熱影響による溶融物の残留やヒビ割れの極めて少ない良好な加工痕が得られることが確認された.特に,パルス数が1回でエネルギが低い場合,レーザ照射により結晶の格子欠陥上に1μm程度の微小ピットが逐次形成されることで欠陥点およびその周囲から選択的に除去され,その結果,表層が徐々に除去されることが確認された.この表面の除去過程は,化学エッチングによる除去過程と同様である.化学エッチングでは,局所的な除去量の制御,すなわち微細加工は困難であるが,レーザでは可能なことから,同等の除去効果が可能となれば,高品位な微細加工が実現可能となる.この場合,レーザ照射部と非照射部との境界が径方向ならびに深さ方向について比較的明確であるため,パルス数を増大させることで,深さ方向の除去量制御についても可能であることが分かった.
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