研究概要 |
黄豆ダイズ集団中に見出される種皮着色突然変異は、ダイズ育種事業において、品種・系統の遺伝的同質性を損なう上で、大きな問題であり,本研究では、黄豆ダイズの種皮着色突然変異の分子遺伝学的機構を解明することを目的としている。近年、日本のダイズ品種・系統から見出された複数の種皮着色突然変異体(以後、変異体と省略)がいずれもカルコンシンターゼをコードする遺伝子ファミリーの一つであるICHS1の遺伝子領域に様々なパターンの欠失変異を起こしていることがサザンハイブリダイゼーションにより示唆された。しかしながら、それぞれの変異体において、ICHS1領域にどのような機構で欠失変異が起きているかは未だ明らかにはなっておらず、現在、複数の変異体から欠失型ICHS1領域をクローン化しているところである。今年度は、刈系557号変異体に続き、吉林15号変異体からインバースPCR法を用いて欠失型ICHS1領域をクローン化し、その詳細な構造を解析した。その結果、吉林15号変異体由来の欠失型ICHS1領域は、刈系557号変異体(第2エキソン途中から欠失変異を起こしていた)とは異なり、ICHS1イントロンの途中から欠失変異を起こしていることが明らかになった。さらに、刈系557号および吉林15号変異体由来の欠失型ICHS1領域に特異的な塩基配列をそれぞれ相同性検索したところ、刈系557号変異体由来の欠失型ICHS1領域では、熱ショックタンパク質をコードするdnaJ遺伝子、吉林15号変異体由来の欠失型ICHS1領域では、カルコンイソメラーゼ(CHI)遺伝子と考えられるダイズESTと高い相同性を示し、両変異体は、異なる遺伝子の間で欠失変異を生じていることが示唆された。
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