今年度、イネ野生種が持つ栽培種に存在しない有用遺伝子を検出するため、以下の実験を行った。まず、野生イネの材料としてミヤンマー由来のOryza rufipogon W630を用い、2種類の典型的な栽培品種(O.sativa Japonica cv.NipponbareおよびO.sativa Indica cv.IR36)で交雑し、それぞれ約200個体からなるBC_2戻し交雑集団を作成した。次に、これらを圃場に展開し、出穂期、最大光合成能、桿長、穂長、有効分げつ数、、種子100粒重、籾長、籾幅、玄米長、玄米幅、収量の11形質について調査した。BC_2集団は様々な形質を調査し終わる登熟期まで、葉を大量にサンプリングできなかったので、BC_2植物自体からのDNA抽出は不可能であった。そこで、各BC_2系統についてそれぞれ自殖種子を15粒まき、幼苗期に葉をまとめて回収し、それらからDNA抽出した。なおこれ以外にDNAの抽出手法については、ごく少量の葉から簡単に抽出できる方法を、今後の実験に応用するために開発した。 来年度はゲノム全体をほぼカバーする約100個のマイクロサテライトマーカーを用いて上記のBC_2自殖後代からのDNAを用いて、各BC_2個体における全ての分子マーカー座の遺伝子型を調べる。さらに、これらを形質についてのデータと比較し量的形質遺伝子座(QTL)解析を行う。これにより、野生種と栽培種間で違いのあらわれた様々な形質についてのQTLが同定でき、また同時に野生種に存在していた栽培種より優れたQTL遺伝子についても明らかにする計画である。
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