研究概要 |
アルストロメリアの植物体再生系を確立するために、葉片及び節間を供試して、植物成長調節物質に対する反応を調査したが、器官形成及びカルス形成ともに認められなかった。一方、胚珠培養を行う過程で、発芽とともにカルスが形成されることを見出し、このカルスをもとに懸濁培養細胞の誘導を試みた。胚珠培養由来のカルスの増殖が緩慢であることから、植物成長調節物質を組み合わせて添加した培地にカルスを置床し、増殖の良い培地条件の検討を行った。その結果、サイトカイニン(BA,TDZ,kinetin)を添加するとカルスは褐変する傾向にあり、1mg/l2,4-Dまたはpicloramを単独で添加した培地でカルスは旺盛な生育を示すことが明らかとなった。 懸濁培養細胞からの植物体再生について、0.5mg/lNAAおよび0.5mg/lBAを添加した培地上で最も高頻度で不定芽の再生が観察された。不定芽は同組成の培地上で発根し、植物成長調節物質を含まない1/2MS培地に移植の後、培養を継続すると根茎の形成が観察された。根茎を形成した再生植物体は容易に順化でき、順化後の植物体について培養変異は認められなかった。 遺伝子導入系を確立するために、懸濁培養細胞にAgrobacterium tumefaciensの接種を試みたところ、picloramを添加した培地で維持している懸濁培養細胞にA.tumefaciens EHA101(pIG121Hm)を接種した試験区において最も高いGUS発現が見られた。接種を行ったカルスについて、接種1カ月後からhygromycinによる選抜を行ったところ、選抜培地上で生存するカルスが現れた。このカルスについてGUSアッセイを行ったところ、カルス全体が青く染色され、GUS遺伝子の導入が強く示唆された。選抜されたカルスを不定芽再生培地に移植すると、4カ月後から不定芽の再生が確認され、培養を継続すると発根し小植物体に成長した。この小植物体からDNAを抽出し、Polymerase Chain Reaction(PCR)によって導入遺伝子の確認を行った。nptII遺伝子及びGUS遺伝子を増幅するプライマーを用いてPCRを行ったところ、再生植物から抽出したDNAを用いた場合に目的サイズのバンドが確認され、外来遺伝子が導入されていることが示された。
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