研究概要 |
ユリ科ネギ属作物における不定胚形成の条件を検討するために、材料として繁殖効率の小さいユリ科ネギ属作物の一つであるギガンチュームを用い、開花前の小花の子房を用いて子房培養を行った。カルスおよび器官形成は、NAAとBA、2,4-DとBAのいずれの組み合わせでも認められた。2,4-DとBAの組み合わせでは、カルスの形成が顕著であったが、ガラス化したカルスが多く、器官形成能がNAAとBAに比較して小さかった。NAAとBAの組み合わせでは、NAA1〜10μMとBA1〜10μMで形成されたカルスは継代培養により増殖し、シュート、球などの器官形成が認められた。形成されたカルスの特徴としては、粒状で表面に光沢のみられる組織が密集したが、細胞間の結合が弱く、分割、移植する場合に容易に遊離した。遊離したカルスからは、極性のみられる組織や器官に分化したことから、形態形成能の高いembryogenicの性状をもつ可能性が考えられた。また、培養した子房が肥大し、子房の組織からカルスを経由せずに器官形成する場合がみられ、ギガンチュームの子房培養により形成されたカルスおよび組織は形態形成能の高いことが示唆された。ユリ科ネギ属作物の小花の子房を培養組織として用いることは、繁殖効率の小さい種では有用であり、形態形成能の高いカルスを形成して選抜することにより、不定胚形成の条件を検討することができるとともに、繁殖効率を高めることが考えられる。
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