研究概要 |
本年度は,ニホンナシの果皮色を制御する遺伝子と連鎖した遺伝子マーカーを開発するために以下のふたつの実験を行った. (1)品種間交雑F_1分離集団におけるバルク化法を用いたRAPDマーカーの探索 交配家系内で果皮色について分離を示すニホンナシ′幸水′×′巾着′のF_1集団(系統7),及び′新高′×′筑水′のF_1集団(系統19)を供試した.各個体の幼葉から全DNAを抽出し,果皮色の表現型に基づいてバルク化した.それぞれのバルクDNAを鋳型として180種類の10塩基プライマー(オペロン社)を単独で用いてRAPD解析を行った結果,約818本のPCR断片が現れた.このうち3種類のプライマーが両系統の赤バルクに,5種類のプライマーが両系統の青バルクに共通して現れるRAPDを増幅した.なかでもOPH19で増幅される青色果に特異的な約425bpのRAPDマーカーの家系内での分布を調査したところ,組換え価は約7〜8%だった.このことから本マーカーは青色果個体の選抜用マーカーとして有望であると考えられた. (2)果皮色形質に関する枝変わり系統と原品種とを識別可能なAFLPマーカーの探索 果皮色に関する突然変異系統である枝変わり品種を用いて,果皮色を制御する遺伝子を直接的に検出できるAFLPマーカーの作出を試みた.ニホンナシ果皮色枝変わり系統(6系統)とその原品種を供試した.合計10種類のプライマーセットについてAFLPパターンの解析を行った結果,合計774本の明瞭なAFLP断片が検出された.このうち枝変わり系統と原品種を識別できる断片が合計22本得られた.これらのうち複数の枝変わり系統を識別できるものが4種類存在した.なかでもACT-CAA プライマーセットで増幅され青系幸水(佐賀系),ゴールド二十世紀および青系新高(園試系)に共通して存在するひとつの断片は,青色果を選抜するためのマーカーとして利用できる可能性が示唆された.
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