研究概要 |
エチレン非感受性であるグラジオラス小花に,タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHI)およびアクチノマイシンD(ActD)処理を行った。開花後処理した小花は、対照区(CK)では平均2日でしおれ始めるのに対してCHI処理すると、4日間日持ちが延長された。未熟な小花にCHI処理すると開花が抑制され、老化遅延効果は認められなかった。ActD処理の効果は開花前・開花後ともに認められず、逆に小花の水浸状化や褐変を引き起こすなど、品質を低下させた。 小花の開花前1日前と開花1日後の小花のmRNAからcDNAライブラリーを合成した。グラジオラス小花の花被片のRNA抽出は、SDSフェノール法を用いて行っていたが、多糖類の除去が困難でありRNA抽出量は低かった。そこでSDSフェノールと塩化リチウムを用いた改良法で抽出すると、ゼリー状の多糖類が見られずRNA抽出量を増加させることができた。CHI処理した小花の抽出RNA量は、CHIがタンパク質合成阻害剤であることからmRNAが蓄積するために、CKよりも多くなることを予想していたが,CKとCHI処理区の花被片1g当りの抽出RNA量は、ほとんど差が認められなかった。精製して全RNAからmRNAだけを取り出したところ、他の処理よりもCHI処理した小花のmRNAが多く得られた。ActD処理小花の抽出RNA量は、明らかに他の処理と比べ全RNA量が少なかった。 開花1日後の各処理におけるmRNAをRT-PCRを用いたDifferential Display法で探索した。RNAmap kitのAp6プライマーを上流に、T12MAプライマーを下流に用いたとき,450bp付近に各処理に共通した特異的PCR産物が確認でき、また上流2000bp付近にCHIのみ見られる断片を確認した。CHIにより老化が抑制されることから,この2000bp遺伝子断片の蓄積は、小花の老化に何らかの関係があることが予想される。
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