研究概要 |
供試品種は,極早生品種の'極早生シスコ'と'マノア'である.2000年8月9日に播種し,直ちに15,20,25および30℃の制御温室に搬入して生育させた.播種4週間後から11週間後まで,各品種・処理区から植物体を採取して生育調査を行った.さらに,茎頂部を切除してFAA等で固定し,実体顕微鏡下で茎頂部の外部形態を観察した後,走査型電子顕微鏡を用いて花序並びに花芽発達過程の詳細を観察した.また,マイクロスライサーを用いて主茎の横断および縦断面を観察した. その結果,花序と小花の発達は次の9段階に分けられた.すなわち,未分化期(花芽発達段階0)では茎頂部に葉原基が分化し,膨大期(1)では茎頂部がドーム状に著しく膨大していた.総苞分化期(2)ではドームの基部に総苞が分化し,小花分化期(3)では総苞の内側に小花の原基が分化していた.花弁分化期(4)では小花に花弁の原基が分化し,雄ずい分化期(5)では花弁の内側に5本の雄ずいが,雌ずい分化期(6)では花弁が伸長し小花全体を覆って雄ずいの内側に雌ずいが,それぞれ分化していた.冠毛伸長期(7)では小花の伸長に伴って小花の基部に冠毛が分化し伸長していた.これらに開花期(8)を加えた合計9段階である.本実験では総苞分化期に達した時に,花序が分化したと判断した.両品種ともに高温区ほど花序形成が促進された.すなわち,'マノア'の花序は,30℃区で播種7週間後に,次いで25℃区では10週間後に,20℃区では11週間後に分化した.一方,'極早生シスコ'の花序は,30℃区では播種9週間後に分化し,次いで25℃区で花芽発達段階が進み,実験終了時の15および20℃区では花芽発達段階0の未分化期であった.両品種ともに生育温度が高くなるほど,細胞の縦方向の伸長が大きくなり,茎長が増加した.また,高温区では随部が小さく,茎径が小さくなる傾向が認められた.
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