1、風致地区指定地における保全対象とする風致の特性解析に対しては、全国437風致地区指定地について分析を行った。まず、(1)風致地区の指定要件を整理し、各指定地で風致の対象となっている要素を抽出し、分析を行った結果、保全の対象としていた風致は、1)地形的、土地利用的に特徴があり、比較的規模が大きく、地域における緑の骨格となる規模、2)、住宅地、公園、社寺などの規模、3)巨木、花木などの小さな規模に大別された。次に行った(2)風致地区指定地の状況の把握についは、まず、指定地と市街地との位置関係、指定地の地形を把握した結果、13タイプに類型された。分析対象の約4割は市街地内、約6割は市街地周辺部に立地しており、市街地周辺部立地型のうち約8割は丘陵地に指定されていた。これらの状況と土地利用状況との関係を見ると、市街化の進んだ地域に立地する指定地は、多様な風致によって構成されていることが明らかになった。 以上の分析により風致概念、風致地区指定地の存在特性を計画スケール(都市スケール、地区スケール、街区スケール、画地スケール)に応じた体系的な整理を行なうためのフレームが構築され、都市化の中での風致の保全には、風致の多層性、多様性が重要であることが認められた。 2、風致を活用した地域形成の手法解析について、本年度は予備調査として風致のあるデザイン誘導手法の把握を目的に、兵庫県西宮市甲陽園、アメリカオレゴン州ポートランド市および周辺地域を対象地として行った。両地域ともに斜面地に開発された住宅地であるが、いずれも既存の地形、樹林を適切に活用した開発手法をとっている。甲陽園については開発前後の地形改変状況の把握、樹林地の保全状況、および、宅地接道部の植栽デザインの状況を把握した結果、(1)街路設定、(2)保全樹林の立地設定、(3)宅地接道部の敷地計画の点で特徴的な手法が明らかになった。
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