研究概要 |
エリシターで冬小麦の細胞を処理すると、病気抵抗性関連(PR)タンパク質遺伝子が新たに誘導される。今年度は、ABA・低温誘導性の細胞外タンパク質として単離されたコムギWAS-3タンパク質が、雪腐れ病エリシター誘導性によっても強く誘導されることが明らかとなった。WAS-3タンパク質は、PRタンパク質として知られているタウマチン様タンパク質と相同性がある。WAS-3遺伝子を小麦培養細胞にパーティクルデリバリーシステムにより導入し、ここからWAS-3タンパク質を精製した。これを用いて抗菌活性を調べたところ、WAS-3は雪腐れ病菌Microdochium nivaleに対して強い抗菌活性を持つことがわかった。(Kuwabara et al., in press)エリシター処理は、ABA、低温とともに細胞内カルシウム濃度を上昇させることが知られている。このことから、細胞内カルシウムは、病原菌シグナル経路と低温シグナル経路のクロストークを制御し、抗菌タンパク質WAS-3や他のPRタンパク質の発現を通してコムギの耐病性をコントロールしていると考えられる。この過程ではカルシウム依存性キナーゼ(CDPK)やホスファターゼがタンパク質の可逆的リン酸化によりPR遺伝子発現を制御している可能性がある。CDPKによりリン酸化を受けるタンパク質として単離されたCMKホスファターゼについて、ウエスタンブロットにより解析した結果、細胞質に局在していることが明らかとなった。
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