研究概要 |
TZS-7の遺伝子ライブラリーの構築に成功した(平均インサートDNA断片10kbx約6000個)。これは,Shingomonasの全塩基配列が3-4Mbpと推測されているので,10kbx400個が最小必要数と考えられ,よって10kb×5000個のライブラリーは十分なものである。そこから,芳香族環開裂遺伝子の獲得をジヒドロキシビフェニルの分解活性を指標にして行った。その結果,2種類の環開裂遺伝子が取得された。それらのDNA塩基配列から,1つは,多環系の開裂酵素に見られる2,3-dihydroxybipheny1,2-dioxygenaseで,もう一方は単環系の開裂酵素のcatechol2,3-dioxygenaseであることが示された。多環芳香族の分解においては,まず1つのベンゼン環の開裂を行い一連の反応後,単環になり続いてcatechol分解経路により開裂し分解していく。よって,それら2つの酵素をコードする遺伝子の存在は,TZS-7においても同様な系で多環芳香族を分解することを示している。 また,それぞれの菌体粗酵素を用いた,ジヒドロキシビフェニル(二環)及びカテコール(単環)の基質に対しての特異性はそれぞれの遺伝子の特徴をよく反映していた。DNAの配列から多環芳香族を開裂するDbp Aと示された遺伝子を発現させた方は,基質としてジヒドロキシビフェニル(二環)を効率よく速い速度で分解したが,カテコール(単環)の分解はほとんど無かった。一方,同じくDNAの配列から単環芳香族を開裂するCat Bと示された遺伝子を発現させた方は,基質としてカテコール(単環)を効率よく速い速度で分解したが,ジヒドロキシビフェニル(二環)の分解は遅かった。また,様々なメチル化カテコールについての活性を調べたところ,興味深いことに,4-methylcatecholの分解能が著しく高かった。現在までに,多くのcatechol2,3-dioxygenaseの基質特異性が報告されているが,4-methylcatechol分解能は特に高かったのが本研究は初めてである。
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