研究概要 |
起源の異なるβ-D-ガラクトシダーゼを触媒素子とし,その特異な糖鎖交換反応を活用して複合糖質の分子認識に関わる最小単位であるGal-GlcNAcおよびGal-GalNAcのガラクトシル2糖単位の系統的かつ実践的な酵素合成プロセスを確立した.さらにガラクトシル2糖単位を出発原料として,α-L-フコシダーゼやN-アセチルヘキソサミニダーゼなどのエキソグリコシダーゼの糖転移反応を駆使して,血液型糖鎖抗原エピトープ,ムチン型糖鎖コア構造やヒトミルクオリゴ糖・スフィンゴ糖脂質共通コア構造などのオリゴ3〜4糖のオリゴ糖鎖ライブラリーの充実をはかることができた.また,数種のエンドグリコシダーゼによる糖転移反応を見出し,オリゴ糖の効率的なプロック合成法という新しい手法を開拓した. 一方,Trichoderma reesei由来のセルラーゼを触媒素子としてその特異な転移・縮合反応を利用し,ラクトースとアルコール類(C_1〜C_<12>)を一段階の反応で直接結合させたアルキルβ-ラクトシドの合成に成功した.これらは,環境適合型の新たなバイオサーファクタントとしての応用に期待が持たれている.さらに,本酵素は,ラクトースとグリセロールとの効率的な結合反応をも触媒することが明らかとなっており,本ラクトシル誘導体は新たなグリセロ糖脂質生産のための素材として有効利用が期待できる. この様にして量産してきた2糖単位を高い反応効率で,簡便にポリグルタミン酸の側鎖に導入する方法を開発した.また,これまでは極めて困難であった人工糖鎖高分子の分子量や糖鎖導入率の精密制御についてもある程度可能となる手法を確立した.この様な構造の明確な糖鎖を導入した人工糖鎖高分子は,様々な生体分子との特異的な親和性を発現することが実証され,新しい分子認識素材としての応用展開が今後期待される.
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