光合成細菌と非光合成細菌との進化的関係を明らかにし、αProteobacteriaの光合成細菌の分類学的再編を目的に、イソプレノイド合成系酵素、Farnesyl diphosphate synthase(FPPS)に注目し、本酵素をコードする遺伝子を決定し、分子系統解析を行った。紅色非硫黄光合成細菌Rhodobacter属、Rhodovulum属、Rhodopsudomonas属、これら光合成細菌と16S rDNAの近縁性が示唆されている非光合成細菌Agrobacterium ferginum、Bradyrhizobium属、さらに、同じくαProteobacteriaに属する根粒形成菌Rhizobium属、Shinorhizobium属、Mesorhizobium属、さらにAgrobacteirum属についてFPPS遺伝子の塩基配列を決定した。データバンク上のFPPS遺伝子も含めて分子系統解析を行った結果、下記のことが明らかとなった。1)FPPS遺伝子は16S rDNA.とほぼ同様の系統進化を辿っており、2)16S rDNAlこ比べて、進化速度が非常に速い。3)そのことより、FPPS遺伝子は、科以下の階層の分類に有効な分子マーカーとなりうる。4)Rhodobacter属とRhodovulum属とAgrobacterium ferginumとの近縁関係は、FPPS遺伝子からも示唆された。5)Rhodopseudomonas属とBradyrhizobium属との近縁関係は、FPPS遺伝子からは示されず、この点において、16S rDNAの結果とは異なる。6)根粒菌は2種類のFPPSを有している可能性が示唆され、根粒菌に特有のFPPSは共生プラスミドもしくは共生領域に存在することを明らかにした。このことより、根粒形成能の水平移動説を支持する結果を得た。以上のことより、αProteobacteriaの光合成細菌の分類体系は一つの科には統合するべきではなく、16S rDNAではその近縁性が示唆されているRhodopseudomonas属とBradyrhizobium属は別属として扱うべきであると考えられた。また、根粒形成菌に共通したFPPSホモログが見つかったことから、根粒形成能との関連について今後、新規イソプレノイド化合物の発見が期待できる。
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