T-2トキシンによるアポトーシス誘導機構についてはT-2トキシンが最初にどのような分子に作用するかについてはもちろん、その後の情報伝達機構もほとんど明らかになっておりませんでした。そこで、ヒト骨髄性白血病細胞HL-60を用い、まず、アポトーシス経路の下流、すなわち、カスパーゼ経路を中心に研究しました。その結果、T-2トキシンによりカスパーゼ3が活性化されており、その下流のpoly(ADP-ribose)polymeraseが切断されていることが明らかになりました。さらに、アポトーシスの最終段階であるDNAの規則的な断片化には、少なくともCaspase activated DNaseが関与していることも明らかになりました。 次に、カスパーゼ3がどのように活性化されたのかを調べました。現在知られている経路は、ミトコンドリア経由そして非経由の少なくとも2つがあり、そのどちらであるかを調べました。ミトコンドリアからシトクロームcが細胞質に放出されることが示されたので、T-2トキシンによるアポトーシスはミトコンドリア経路であることが示されました。さらに、その下流のカスパーゼ9の活性化も確認され、活性化カスパーゼ9がカスパーゼ3を活性化していることが示唆されました。なお、この研究成果は学術論文として投稿中です。 最初にT-2トキシンがどのような分子に直接作用するのかに関しては、T-2トキシン受容体が存在すると考え、探索しました。マウス胸腺細胞cDNAライブラリーを作成し、スクリーニングをし、候補は200ほど得られましたが、残念ながら最終的に単離するには至っておりません。また、がん抑制遺伝子p53の関与に関しては現在進行中であります。
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