硫酸還元菌由来のFMN結合タンパク質について、タンパク質工学的研究を行った。野生型FMN結合タンパク質の結晶構造解析の結果、ユニットセル当たり2分子となっており、また、ペプチド鎖同士が相互作用をしている事がわかった。さらに詳細な構造解析を行ったところ、2量体を形成する事によってペプチド鎖とFMNの結合を強めている事を示唆した。そこで、カルボキシル末端に存在する122番のロイシン残基に着目した。この残基は、FMNのイソアロキサジン環近傍に存在し、2量体形成に重要であると考えた。この残基を欠失させた変異型FMN結合タンパク質およびチロシン、リジン、グルタミン酸に置換した変異型FMN結合タンパク質を遺伝子工学的に創出し、その性質を調べた。その結果、122番のロイシン残基を欠失ないしチロシンヘ置換することによって、モノマー同士の結合が強まっていることを、超遠心場における拡散平衡測定により明らかにした。この事は、動的光散乱法の結果とも一致した。しかし、FMNとの結合においては、チロシン改変体を除いてすべて弱まっていたが、特に欠失変異体では非常に弱まっていた。一方、リジン改変体の酸化還元電位は、若干正にシフトする一方で、グルタミン酸改変体では、大きく負に変化した。これらの結果から、122番のロイシン残基は、FMNを結合するために必要な空間を確保すると同時に2量体間に適当な距離を作る以外に、酸化還元電位にも大きな影響を与えていると考えた。平成13年度は、これらの改変体の詳細な構造解析を行い、高次構造、特に結晶水やFMNの溶媒への露出度と酸化還元電位やFMNとの解離定数などの関係を明らかにしていく予定である。
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