近年、メチロトローフ細菌のみに存在するといわれてきたHCHO資化経路(リブロースモノリン酸経路)が様々な原核微生物のシークエンスプロジェクトの進行により、非メチロトローフ細菌においても広く遺伝情報として持つことが明らかになってきた。 本研究ではこの資化経路が様々な生育条件下で副次的に生成するHCHOの強い毒性を回避する機構として備わっている可能性を想定し、バイオマス資源として注目されているリグニンモデル化合物の代謝に着目した。Burkholderia cepacia TM1はバニリンやバニリン酸といったリグニンモデル化合物を資化し、その代謝過程では副産物としてHCHOを生成する。このことからこの代謝において生成したHCHOとHCHO資化経路との関係を明らかにすることを目的とした。 培養時に微量のHCHOを培養液中に添加することにより、微弱ではあるがHCHOを糖リン酸へと固定する酵素3-ヘキシュロース6-リン酸シンターゼ(HPS)活性が誘導され、さらに、リグニンモデル化合物を炭素源としたときにもHPS活性が誘導されることが明らかになった。これはリグニンモデル化合物代謝時の脱メチル化反応により生成するHCHOにより誘導を受けたものと考えられ、HCHO資化経路が毒性回避機構として機能することを示唆している。 昨年度までにB. cepacia TM1への形質転換方を確立したことから、メチロトローフ細菌の強力なHCHO固定酵素をコードする遺伝子をB. cepacia TM1で過剰発現させ脱メチル化反応に及ぼす影響を検討した。その結果、形質転換体はHCHOを含む培養液中で生育のラグタイムが短くなる傾向が見られ、リグニンモデル化合物を炭素源として生育させると生育速度、菌体収量が増加することが明らかになった。これは代謝過程でバニリン酸の脱メチル化反応によって生成したHCHOの毒性を低く保つことができるようになったためと考えられる。(投稿中)
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