1.イノシトール分解系遺伝子の機能解析(細胞内誘導物質の同定) これまでの遺伝子情報解析・変異解析により、枯草菌のイノシトール分解系のアウトラインとその各反応段階に対応する遺伝子をある程度推定することができ、特に誘導物質生成にはiolBCDEGの5遣伝子が必要であることが明らかとなった。そこでこれらの各遺伝子を大腸菌内で発現させ、その産物の示す酵素活性を検討した。既に初発反応を担うiolG(inositol dehydrogenase)に加え、iolEが2段階目の反応を担うinosose dehydrataseを、iolDが3段階目のdiketodeoxyinositol hydrolaseをコードすることが示唆されたが、本年度は残るiolBCに焦点を絞り詳細に検討した。その結果これら二つの遺伝子産物は複合体となって4段階目の反応を担うDKH kinaseを形成することが示唆された。さらに、その反応産物DKHPは試験管内でIolRとiolプロモーターDNAとの結合を阻害した。即ち、DKHPが誘導物質であることが強く示唆された。 2.イノシトールの細胞内への取り込みメカニズムの解析 イノシトールの細胞内への取り込みメカニズムは全く未知であったが、iolTならびにiolFがイノシトールの取り込みに関与する知見を得た。iolTを破壊するとイノシトールの取り込み能力は著しく低下し、iolTがイノシトールの主たる取り込みを担う輸送蛋白をコードする。本年度iolTの発現制御を詳細に解析した結果、この遺伝子はiol operonと同様に培地へのイノシトールの添加によって誘導されること、またこの誘導はIolRリプレッサーによって制御されていることを明らかにした。さらにIolRによって転写が制御されるiolTのプロモーター、ならびにIolRが認識結合するDNA領域の特定にも成功した。
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