研究概要 |
1.Cercospora cruentaにおけるアブシジン酸の初期生合成経路:C.cruentaの初期菌体から新規な生合成中間体(2Z,4E)-γ-イオニリデンアセトアルデヒドを単離した。この内生アルデヒドは、^<18>O_2雰囲気下にて、ほぼ完全に標識化された。同様に内生ABA分子は、カルボキシル酸素の一箇所、リング上酸素の二箇所、計三箇所の酸素原子が^<18>Oで置換された。また、[1-^<13>C]-グルコースの代謝実験において、ABAおよびβ-カロテンのいずれもがメバロン酸経路単独で生合成されていることが示された。これらの結果は、(2Z,4E)-γイオニリデンアセトアルデヒドが、現時点では未知なカロテノイド前駆体の酸化的切断によって生成する鍵ABA生合成中間体である可能性を示唆している。 2.Cercosporaのアブシジン酸生合成経路における光学活性イオニリデン酢酸類の代謝:キラル・セルOJカラムを用い、ABA生産糸状菌C.rosicolaとC.cruenta由来のそれぞれα、γ-イオニリデン酢酸の絶対立体配置を、初めて(R)と決定した。これは、天然型(S)-ABAの生合成前駆体として矛盾しなものであった。更に[1,2-^<13>C_2]-αおよびγ-イオニリデン酢酸の両鏡像異性体を調製し、C.rosicolaおよびC.cruentaに投与した。6通りの組み合わせによる代謝実験によって、C-1',4'位の二段階のハイドロキシレーションを含む生合成変換での立体選択性が、対照的かつ明確に示された。 3.Cercospora cruentaにおける2,3-ジヒドロ-γ-イオニリデンエタノールの同定:C.cruentaのアブシジン酸(ABA)生合成において中間体として想定されるC_<15>アルコール類をGC-EI-MSにて検索した。標品類との比較の結果、糸状菌C_<15>経路を支持する化合物は見出されず、痕跡量の5-[2',2'-dimethyl-6'-methylene-1'-cyclohexyl]-3-methyl-4-penten-1-ol(2,3-ジヒドロ-γ-イオニリデンエタノール)が新たに同定された。代謝実験の結果、2,3-ジヒドロ-γ-イオニリデンエタノールは、ABAの生合成中間体ではなく、γ-イオニリデンアセトアルデヒトの代謝物であることが示された。 4.糸状菌生合成遺伝子のクローニング:上記のように、高等植物と糸状菌との生合成経路については、カロテノイドの酸化的切断を経由するC_<40>経路という見地からの共通性が強く示唆された。既にクローニングに成功している植物遺伝子との高い相同性の予想の元、、RT-PCRなどの分子生物学的手法を駆使しDioxygenase,P-450 monooxygenaseなどの糸状菌生合成酵素のクローニングを検討した。
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