研究概要 |
ヒト尿中のリボヌクレアーゼから初めて発見されて以来、補体系のタンパクから続々と発見されてきているC-結合型糖鎖α-C-マンノシルトリプトファンの生物学的機能の解析を目指して昨年度すでに、その化学的全合成に成功している。即ち、α-メチル-D-マンノースを出発原料とした10段階からなる効率的かつ柔軟性のある合成ルートであるが、その中でマンノシルインドールとL-セリンから誘導したアジリジンカルボン酸のカップリング反応には、若干の再現性の問題があった。この反応に使われるルイス酸過塩素酸スカンジウムSc(ClO_4)_3はこの研究で新たに見出されたものだが、その乾燥度によって収率が大きく変化し、しかも非常に吸湿性が高いため乾燥度を管理するのが難しい。そこで、このステップの改善を目的にアジリジンの開環反応で使われている他のルイス酸(BF_3OEt_2,Yb(OTf)_3,In(OTf)_3,InCl_3など)を精査した。その結果Sc(ClO_4)_3が最も優れていることが再確認された。なお、このルイス酸は多くのインドール誘導体とアジリジンカルボン酸とのカップリングによる光学活性トリプトファン合成に有用であり基質一般性があることも確認した。 一方、このC-結合型糖には今のところマンノースのみ見つかっているが、糖の種類を判別するためには、今のところNMRによる方法しかなくかなりの量のサンプルを必要とする。そこで、超微量での分析法の開発を目指して、C-マンノシルトリプトファンのグルコース、ガラクトース類縁体をC-マンノシルトリプトファンの合成ルートにしたがって合成した。これらサンプルは、エドマン分解法を用いた、タンパクのアミノ酸配列決定法における標品として使用する一方C-マンノシルトリプトファンは代表的なレクチンであるConAと結合しないことも明らかにした。
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