Δ6不飽和化酵素(D6D)は、生体内でn6、n3系多価不飽和脂肪酸の合成に関与している。各種の脂肪酸をラットに摂食させた筆者らの実験では、肝臓D6Dの活性あるいはそのmRNA発現量とdesaturation index(20:3n6+20:4n6/18:2n6)に対する応答が一致しないという結果が得られた。そこで、本実験ではD6Dに対する抗体を調製し、D6Dタンパク質量の測定を試みた。 7週齢のSD系雄ラットにココアバター、高リノール酸サフラワー油、イコサペンタエン酸エチルエステルまたはドコサヘキサエン酸エチルエステルを含む食事を与えて2週間飼育した。D6Dの発現を増加させると予想されるフィブレート系薬剤であるゼンフィブロジルをラットに7日間経口投与する群も設けた。飼育終了後、超遠心法によってラット肝臓からRNA画分およびミクロソーム画分を調製した。SDSで可溶化したミクロソームタンパク質をPVDF膜にウエスタンブロッティング後、一次抗体として家兎より調製したD6D抗血清を反応させた。二次抗体としてHRP標識抗ウサギIgG抗体を反応させ、発色させた。D6D抗体を調製するために、家兎をD6DのN末端から15残基のペプチド-KLH共役産物をアジュバントとともに免疫した。 ゼンフィブロジル投与ラットから得たミクロソーム画分には、薬物処理していないラットのそれと比較して約6倍強い免疫反応を示すタンパク質(52kDa)が存在した。各種食事脂肪酸を与えたラットから調製したミクロソームに含まれる52kDaに相当するタンパク質の免疫反応強度は、D6D活性の強さに一致する傾向を示した。従って、摂取脂肪酸の種類はD6Dの活性とそのタンパク質量に同じ影響を及ぼすが、D6DのmRNA発現量には異なった影響を及ぼすことが考えられた。
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