食事脂肪酸の種類と量は各種の生活習慣病の防御機構と密接な関係を有していることから、報告者は細胞内脂質バランスにおける脂肪酸の防御機構に注目してきた。脂肪酸は調節分子として、核内のレセプターと結合して遺伝子の発現に大きく関わっていることが指摘されており、またプロスタグタンジンおよびトロンボキサンといった細胞間情報伝達物質の前駆体でもある。従って、脂肪酸の諸機能を見いだすために、各種脂肪酸の合成酵素の特徴および発現の調節機構を明らかにすることは栄養学的に重要であると考えられる。 報告者は、リノール酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸および対照として飽和脂肪酸を多く含む食事を高コレステロール血症ラットに与え、動脈硬化症状が飽和脂肪酸を与えたラットより改善されていることと、肝臓脂肪酸組成から多価不飽和脂肪酸摂食ラットでは長鎖不飽和化が遅れ、それは長鎖不飽和化酵素の律速酵素であるの活性やmRNA量の多価不飽和脂肪酸間での応答の違いによることを明らかにした。すでに報告されているがラット肝臓のΔ6不飽和化酵素mRNAは2本バンドが確認できた。また、ラツトΔ6不飽和化酵素のアミノ酸N末端配列の10残基のペプチド(BLASTの検索では相同な配列はラツトΔ6不飽和化酵素のみ存在)を合成して抗体を作成し、その抗体を用いてラット肝臓ミクロソーム中の酵素タンパク質量を測定したところ、ウェスタンブロティングにより明確な2本のバンドが得られた。このバンドを別々に解析するためにミクロソームをデオキシコール酸により可溶化し、イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて52kDaと46kDaのタンパク質を分離している。 確認のためにΔ6不飽和化酵素mRNA量が増加する報告されているクロフィブレート系薬剤であるジェンフィブロジル投与したところmRNA量およびタンパク質量も10培増加した。さらにΔ6不飽和化酵素活性はジェンフィブロジル投与で2〜3倍有意に増加し、また抗Δ6不飽和化酵素抗体を反応させ、活性を測定すると、30%程度活性が減少した。従って本抗体はΔ6不飽和化酵素に結合していることが明らかとなった。
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