研究概要 |
1、種々のヒトハイブリドーマにおけるレチノイドによる抗体産生増強効果の違い 5種類のヒトハイブリドーマ細胞株AD2、AE6、BD9、HB4C5、HF10B4について、レチノイド処理による抗体生産量の増強割合をELISA法を用いて比較した。レチニルアセテートとレチノイン酸(RA)は、融合パートナーA_4H_<12>由来のハイブリドーマ細胞株AD2、AE6、BD9の抗体生産量を2〜8倍まで増強した。しかし一方で、融合パートナーNAT-30由来のハイブリドーマ細胞株HB4C5、HF10B4の抗体産生を増強しなかった。また、抗体産生増強はIgM、IgGといった産生される抗体のアイソタイプに依存していなかった。これらのことから、レチノイドによる抗体産生増強効果の違いはハイブリドーマを作製する際のB細胞よりもむしろ融合パートナーに起因している可能性が示唆された。 2、抗体産生増強効果とレチノイドレセプターの発現との関係 RT-PCR法を用いてヒトハイブリドーマにおけるレチノイドレセプターの発現パターンを調べた。その結果、RA処理によってほとんどのハイブリドーマがRAレセプター(RAR)-α,β,γとレチノイドXレセプタ-(RXR)-α,βを発現していることが確認された。抗体産生増強を示すAE6、BD9細胞と示さないHB4C5、HF10B4細胞を比較したところ、抗体産生増強を示さないHB4C5、HF10B4細胞では特にRXR-αの発現量が低いことが明らかとなった。また、RXR-αの発現量の低さはその融合パートナーであるNAT-30についても同様であった。 以上のことから、ヒトハイブリドーマにおけるレチノイドによる抗体産生増強効果はハイブリドーマの融合パートナーに強く影響を受けており、その発現機構にはRXR-αの発現レベルが関与していると考えられた。
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