翻訳段階の重要な調節段階であるペプチド鎖伸長段階に注目し、ペプチド鎖伸長を調節する因子のうち伸長因子1(EF-1)と伸長因子2(EF-2)の活性測定法の確立を試みた。EF-1はα、β、β'、γ(またはα、β、γ)サブユニットより構成されており、GTPおよびaa-tRNA存在下に、EF-1α・GTP・aa-tRNA三重複合体を形成し、aa-tRNAをリボソームに結合させ、EF-1α・GDPがリボソームから遊離する。EF-1α・GDPからEF-1α・GTPを再生するββ'γのGDP/GTP交換活性が伸長活性に大きく影響することからββ'γのGDP/GTP交換活性を測定することが重要である。予め調製しておいたEF-1α・[^3H]GDPを基質として用いて、ラット肝臓のββ'γのGDP/GTP交換活性の測定を試みたが、生体内のββ'γ活性を評価できる測定方法の確立には至らなかった。ββ'γを組織から調製する際に用いる緩衝液および活性測定を行う際の温度の検討が今度の課題である。ペプチド鎖転移反応を触媒するEF-2は、その活性がリン酸化により調節されている。EF-2のリン酸化状態を調べるためには抗EF-2抗体が必要であるが、EF-2は動物種間での相同性が高く抗体作製が困難である。そこでEF-2の活性に関係するリン酸化部位(Thr56)付近のアミノ酸配列と同様なペプチド(ARAGETRFTDTRKD)を合成し、N末端にCysを添加しキャリアータンパク質(KLH)と結合させてこれを抗原としてウサギに免疫した。得られた抗血清から抗体をAffinity精製し、この抗体を用いてラットEF-2の検出を試みた。ラットの組織から調製したEF-2を等電点電気泳動法でリン酸化状態の違いにより分離し、その後作製した抗ペプチド抗体を用いてイムノブロットを行った結果、リン酸化EF-2と非リン酸化EF-2の両方が検出された。本研究で作製した抗ペプチド抗体はラットEF-2のリン酸化状態の測定に利用可能であり、EF-2のリン酸化状態を調べることでEF-2の活性を予想することが可能である。
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