筑波山周辺の17ヶ所のアカマツ林に、20m×30mの方形区を設け、マツの生育状態、材線虫病による枯死率、植生、土壌条件および菌根性、腐生性キノコの発生消長を調査した。その結果、各調査地の菌根菌の種数と、生残するマツおよび菌根性の他樹種(コナラなど)との胸高断面積合計との間には、有意な相関が見られた。すなわち、菌根性キノコの多様性には、宿主樹種の現存量が大きな影響を与えていることが明らかにされた。すなわち、材線虫病被害によってマツの現存量が減少すると、菌根性キノコの多様性は大きな影響を受けること、しかし、コナラなど菌根性の他樹種が存在する林分では、菌根菌の多様性が高く保たれることが明らかにされた。さらに、菌根性キノコの出現が多い林分において材線虫病に対する抵抗性が高いという傾向がみられるかどうかを検証するために、1999年および2000年の秋時点のマツの生残率をロジスティック曲線に当てはめ、2000年夏の「被害進行係数」を求めた。この被害進行係数を林分の「枯損しやすさ」の指標とみなし、これと菌根菌の種数との関係を調べたところ、全く相関は見られなかった。この結果からは、菌根菌の多様性が材線虫病抵抗性に寄与している可能性は高くないといえる。また各調査地の菌根性キノコの種組成をTWINSPANによって分類した結果、アカマツのみを宿主としアカマツの生残木の現存量の高い調査地のみに出現する種群、アカマツとコナラなど菌根性樹種の両者を宿主としていると見られ菌根性樹種全体の現存量の高い調査地にみられる種群、腐生性が高いとみられる種群などに類別することができた。今後、調査を継続するとともに地下部の菌根の形態およびDNAによって菌根自体の多様性を明らかにし、きのこの多様性との対応を検討する必要がある。
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