植物のCO_2交換過程の制御は気孔の開閉と葉内におけるCO_2同化の2つのプロセスによって決定されている。近年、植物による制御を表す関数として気孔コンダクタンスと光合成のサブモデルを組み込むことで、植物個葉や群落での光合成速度や蒸散速度の同時推定が可能になってきた。しかし、実際の植物はどのようなパラメータをとるものなのかについての情報があまりにも少ないまま、モデルを使ったシミュレーションが先行しているのが現状である。そこで植物個葉のガス交換測定と併行したクロロフィル蛍光の測定によって、気孔開閉によらない光合成活性のうち電子伝達速度に関する特性を直接評価し、これをガス交換測定から得られる知見と合わせることによって、光合成速度制御の原因について解析することを目的として研究を行ってきた。 平成13年度は、野外の様々な環境条件下において、個葉のガス交換速度およびクロロフィル蛍光の特性を測定し、放射環境・温度・湿度・土壌水分といった環境条件や植物の生理的条件、あるいは種の違いなどによってその特性がどのように変化するのか、についての情報を集めた。測定は、瀬戸内気候区内の緑地帯に生育する樹木を中心に行い、年変化を含む長期的なデータを収集した。また同時に微気象各項目および土壌水分条件を連続モニターした。また室内における環境制御実験を行い、水分条件、温度・光条件や、各個葉の特性の違いが、個葉のガス交換速度およびクロロフィル蛍光の特性をどのように決定しているのかについての詳細なデータを収集した。さらに、これらのデータにもとづいて、気孔開閉によらない光合成活性を評価し、この特性をパラメータ化することによって光合成モデル中の各パラメータの挙動について解析した。またこのようにして同定されたガス交換特性パラメータの挙動が、どのように実際の光合成速度や蒸散速度を制御しているのかについて、数値実験による解析を行った。
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