本研究の目的は、先進国と途上国が協力して熱帯林を保全することの社会経済的効果を評価することで、今後の熱帯林管理のあり方を明らかにすることにある。対象はマレーシアの熱帯林である。マレーシアではヤシ園などのプランテーションが急増し、熱帯林破壊が深刻化している。そこで、残された熱帯林を保護するとともに、劣化の進んだ熱帯林を回復するために日本が技術的・資金的支援を行う政策を想定する。その上で、この熱帯林保護策の経済的効果を評価する。評価結果は金額で得られるので、実際に熱帯林保護に必要な費用と比較することが可能となる。 本年度は、以下の手順にしたがって研究を行った。 1 GISアプリケーションを用いて土地利用データの分析を実施した。昨年度に収集したマレーシアの土地利用に関するデータをもとに空間的統計解析を実施した。土地利用の経済モデルを構築し、土地利用選択に関する離散選択モデルの構築を行った。 2 昨年度に熱帯林評価にはコンジョイント分析が適していることが明らかになったが、本年度はインターネットによるコンジョイント分析の可能性を検討した。その結果、属性数が比較的少ないため、選択型コンジョイントがインターネット調査でも可能であることが示された。そこで、CBC/Webを用いてインターネット上での調査モデルを構築した。またデータベースPosrgerSQLを用いて入力データのデータベース化についても検討した。 3 以上のモデルを用いて、小規模のパイロット調査を実施した。調査結果をもとに様々な熱帯林保護策の経済的効果を比較し、今後の熱帯林保全策のあり方について検討した。
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