エゾマツは倒木更新を特徴とするが、林床で更新することもまれに見受けられる。林床に更新したエゾマツの調査を行い、25本のサンプルが得られた。それらの針葉を採取してメタノール抽出を行い、ガスクロマトグラフィー分析を行った。分析カラムには無極性のものと極性のものの2種を用いた。分析条件等の最適化が不十分なことも考えられるが、現時点ではガスクロマトグラム上で特徴ある相違点を認めるには至っていない。 上述の成分分析と並行して、トウヒ属樹木の耐病性に重要な役割を持つと考えられるカルコンシンターセファミリー遺伝子のクローニングを行った。塩基配列の分かっているブドウやピーナッツのカルコンシンターゼとマツのスチルベンシンターゼに共通する配列をプライマーにしてゲノムDNAに対してPCR増幅を行った。PCR産物はTAクローニングベクターを用いてクローニングした。30のポジティブクローンを得た。うち、6クローンの塩基配列分析を行ったところ、4種のカルコンシンターゼ遺伝子を確認したが、これらの中にはスチルベンシンターゼは含まれていないと考えられた。、また、残り24のポジティブクローンにスチルベンシンターゼはも含まれないことが予想された。スチルベンシンターゼ遺伝子の検索のため別のプライマーを用い、PCR増幅を行って、上述と同様のクローニングを行った。そのうち、22クローンの塩基配列を分析した。その結果、3種類のスチルベンシンターゼと思われる遺伝子を確認した。エゾマツのスチルベンシンターゼはピノシルビン合成タイプと思われた。 これらのクローニングされた遺伝子がいつ、どこで発現しているかということは、今回は明らかにできなかった。林床のエゾマツはこれらの遺伝子の発現が高いレベルにかの検討を今後継続して行ってゆく。
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