紙の塗工効率・印刷適性・筆記性の向上等を目的としてほとんどの紙・板紙に適用されているサイズ処理(親水性の紙に相反する性質である撥水性を付与する処理)の中でも、抄紙環境に影響されず、排水処理負荷がほとんどない表面サイズ処理システムおよび表面サイズ紙のサイズ性発現機構について検討を行った。 1.表面サイズ処理用原紙の特性 表面サイズ効率は原紙のサイズ性に大きく左右されることが知られており、未サイズ紙に表面処理だけでサイズ性を付与することは非常に困難であるが、その要因の1つとして、シート中のカチオン成分の関与が示唆された。さらに、ロジン系サイズ剤を使用する場合に必要不可欠であると考えられていたアラム(硫酸アルミニウム・紙劣化の原因物質)を全く使用することなく、4級のカチオン性高分子のみを内添処理したシートにおいても、アラム内添シートと同等以上の非常に良好なサイズ性発現効率が得られ、抄紙工程の中性化に対応しつつ、安価なロジン系エマルジョンサイズ剤を利用可能な表面処理システムの優位性が示された。 2.紙中サイズ成分の分布状態とサイズ性との相関 紙中のエマルジョンロジンサイズ成分を気相で臭素ラベル化した表面サイズ処理シートにX線光電子分光分析を適用し、シートの0.2mm×0.2mmの範囲を1024分割してBr3dピークとC1sピークの面積比から定量的分布評価を行った結果、シート中のサイズ成分量が同じで、その初期分布状態(サイズ成分の局在化の度合い)が同様であっても、シートのサイズ性には明らかに違いがあり、特に水の浸透に対する分布の安定性がシート中のカチオン成分量と高い相関を示し、最終的なサイズ性発現効率の向上に寄与することが示唆された。 また、その他にもアラム内添抄紙系の繊維荷電特性に関して、系内のアルカリを利用したAl成分の繊維表面への優先的な吸着挙動との相関が明らかとなった。
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