本申請研究の目的は、道東・三陸沿岸域において濃密に分布するオキアミ類に対し、その3次元分布構造の解明と資源量推定法の開発を行う事である。申請年度内においては、以下の研究事項に従事した。 調査航海として、水産庁東北区水産研究所所属調査船「若鷹丸」によるオキアミ資源調査(三陸・常磐沖合、沿岸域、2000年4月13日〜2000年4月26日)と海洋水産資源開発センターによるスケトウダラ・オキアミ資源調査(北海道東部太平洋沿岸域、2000年6月15日〜7月19日、2001年1月05日〜1月31日)の3航海を行い、音響・海洋環境の各データ収集と生物サンプリングを行った。また、北海道東部の2調査では、水中探査ロボット(ROV)によるツノナシオキアミ(以下、オキアミ)の遊泳姿勢の観測を試みたが、観測は出来なかった。撮影時の白色ライトやモータの振動音によるオキアミの忌避行動が原因と考えられ、今後の課題となった。 次に、オキアミからの反射音響の周波数特性に着目し、本調査で得られた音響データから種判別を行った。諸元値には生物サンプリングによる測定値とストレートシリンダモデルによる理論TS値を用い、計量魚群探知機で用いられる高周波(120kHz)と低周波(38kHz)の反射音響強度の差を算出した。計測誤差等も考慮し、オキアミ固有の音響強度差は6〜13dbと定義された。音響データから各測定点・各水深ごとに高周波と低周波の音響強度差を求め、オキアミ固有の強度差に相当するデータの抽出を行った。 更に、抽出されたデータからオキアミ生息域である表面水温12度以下の海域のデータを抽出し、当該海域の面積散乱強度S_Aをマッピングした。その結果、本研究で用いた音響強度差はオキアミ類の分別に適していると考えられた。今後は、これらの結果を基に、現存量推定における精度向上を目指す。
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