魚類における内分泌撹乱化学物質のエストロゲン受容体(ER)を介した作用機構を明らかにする目的で、メダカをモデルとして以下の研究を行った。 近年、魚類のERにはαとβ、γの3種類が存在することが明らかとなったが、メダカではまだαタイプしか知られていない。そこで、先ずメダカERβとERγのcDNAクローニングを行うことにより、メダカにおける3種類のERの存在を確認し、3種類のERの構造や機能について比較・検討した。 魚類ERβの保存配列より設計されたプライマーを用いたPCRにより、メダカ卵巣由来のcDNAから2種類のER cDNA断片が得られた。これらのcDNAは両者とも約500個のアミノ酸残基をコードするものであり、そのアミノ酸配列はERのタンパク翻訳領域の大部分を含んでいた。分子系統樹による解析から、得られた2種のcDNAはそれぞれメダカERβとERγであることが確認された。次に、メダカ雌における3種のER mRNAの発現組織をRT-PCR法により調べた。ERα mRNAは肝臓と卵巣にのみ検出されたが、ERβmRNAは脳や肝臓、卵巣、筋肉、鰭で発現しており、さらにERγ mRNAは調べた組織のほとんどで発現が認められた。 以上のように、メダカにおいても3種類のERが存在することが初めて明らかにされた。また、3種類のER mRNAの発現組織に違いがみられたことから、エストロゲンや内分泌撹乱化学物質の作用において3種のERは異なる役割を担っている可能性が高いことが示された。しかし、3種類のERの機能的相違の詳細については、今後の課題として残された。
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