研究概要 |
平成12年度研究計画に従い,1.甲殻類化学感覚に対する廃糖蜜の刺激効果の生理学的計測,2.甲殻類に対する廃糖蜜の刺激効果の行動生理学的検証の実施を実行した。 1.供試個体にイセエビ,タイワンガザミ,ノコギリガザミを用い,電気生理学的に第一触覚の化学受容器(嗅覚)を支配する神経線維(神経束あるいは単一神経)を標本に,糖(Galactose,Glucose),アミノ酸(Alanin,Glysin,Glutamic acid,Taurin),およびサトウキビエキスに対する応答強度を電気生理学的に記録評価した。これまでにアミノ酸に対する感覚能力については報告されているが,本研究により,糖が甲殻類嗅覚に強く作用することが明らかになった。タイワンガザミ,ノコギリガザミの成果は投稿準備中である。 2.A)タイワンガザミを水槽内に収容し,糖(Galactose,Glucose),アミノ酸(Alanin,Glysin,Serin,Glutamic acid,Betain),サトウキビエキスに対する反応行動を観察した。反応行動過程は,嗜好餌料に対しては"触覚の運動頻度の増加→鰓の活動開始→脚・鋏を利用した味覚試験→歩行開始"を経る,嫌忌餌料(キニーネ)に対しては"触覚の運動頻度の増加→触覚掃除→(高速)歩行開始"を示すことが明らかになり,行動観察による餌の効果判定手法を確立した。糖,アミノ酸は誘引物質であると判定できた。本研究成果は,2000年度日本味と匂学会誌にて公表した。 B)イセエビ漁業(磯たて網漁業)において黒糖を餌料として網に装着し漁獲の変化を見た。漁獲量には有意な向上は見られていないが,次年度以降も餌料の改良とともにフィールドでの餌料効果検証試験を継続する。
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