研究概要 |
機能遺伝子を用いた硫酸還元細菌の検出と活性評価法の開発のため,異化的な硫酸塩還元過程の最終段階で働く亜硫酸還元酵素をコードしている遺伝子(dsr)の解析を行った。先ず,汚濁水域から分離した新種と考えられる硫酸還元細菌(Desulfocapsa sp.)1株とDSMZから入手したDesulfovibrio属11種,Desulfomicrobium属4種,Desulfomonas属・Desulfosporosinus属・Desulfobacterium属各1種の計19種の硫酸還元細菌から全DNAを抽出した。各株のDNAを数種の制限酵素で処理し,Desulfovibrio属の基準種から得たdsrの一部をプローブとして,サザンハイブリダーゼーションを行った。その結果,全ての株から単一のバンドが検出され,硫酸還元細菌にはdsrは単コピーであることが確認できた。 次に,データベースに登録されている硫酸還元細菌のdsrの塩基配列をもとにPCRプライマーを作成した。抽出したDNAをPCRの鋳型とし,作成したPCRプライマーを用いてPCRを行ったところ,全ての株から約1.9kbpの単一の産物を得ることに成功した。上記のプローブを用いて,このPCR産物のサザンハイブリダイゼーションを行ったところ,dsrであることが確認できた。このPCR産物を様々な制限酵素で消化し,制限酵素断片長(RFLP)解析を行ったところ,Desulfomicrobium属4種とDesulfobacterium属1種は同じようなRFLPパターンを示したが,Desulfovibrio属やDesulfomonas属とは異なるパターンであった。このことは硫酸還元細菌の菌種によってdsrの塩基配列が異なると考えられ,dsrを標的として硫酸還元細菌を種類ごとに識別・定量できる可能性が示唆された。
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