研究課題
本年度は、ニホンウナギからクローン化した2つのIGF-IcDNAをプローブとして、(1)ウナギの成長過程、成長ホルモン(GH)投与および環境や栄養状態の変化に伴うIGF-ImRNAの発現動態を定量PCR法で調べた。また、(2)人工孵化仔魚の器官形成および発達過程におけるIGF-IおよびGHの組織分布を免疫組織染色法により調べた。(1)肝臓および鰓におけるIGF-ImRNAの発現動態ウナギを3ヵ月間飼育し、肝臓のIGF-ImRNAの発現量を調べた結果、いずれの月でも、成長の良い魚ほどIGF-I-Ea1およびEa2mRNAの発現量は高いことがわかった。ウナギに0.25μg/gの組み換えウナギGHを腹腔内注射すると、肝臓および鰓のIGF-I-Ea1およびEa2mRNAの発現量は増加した。また、肝臓および鰓をGHで培養すると、IGF-I-Ea1およびEa2mRNAの発現量は濃度依存的に増加した。一方、海水で飼育したウナギの肝臓と鰓のIGF-I-Ea1およびEa2mRNAの発現量は、淡水飼育魚よりも高かった。これらの結果から、ウナギのIGF-Iは、サケやティラピアなどの広塩性魚類と同様に、成長促進のみならず海水適応にも関与すると考えられる。現在、栄養状態の変化に伴う肝臓のIGF-ImRNAの発現動態を解析している。(2)人工孵化仔魚におけるIGF-Iの組織分布孵化仔魚において、下垂体におけるGH産生細胞は、6日目の孵化仔魚から観察された。一方、サケIGF-I抗体に対する陽性反応は、孵化後、3日目までは、頭部の軟骨細胞および体全体の上皮細胞に観察された。また、4日目以降の仔魚では、主に肝臓に認められた。これらの結果は、IGF-Iが孵化仔魚の器官形成および発達に関与することを強く示唆する。
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