研究概要 |
目的:計算機によって網漁具の水中での形状を詳細かつ簡便に推定するため,本研究では,水中内での網地の形状および運動に関する汎用的な数値シミュレーション手法を開発する。 本年度の成果:本年度は網地の形状と運動を推定する数値計算用モデルを開発し,これを適用して試計算を行った。さらに,得られた計算結果の3次元的な可視化方法についても検討した。 計算モデルは極力煩雑さを排し,簡便に適用できるような計算モデルの構築を目指した。網地は複数の質点とバネで接合された構造物と仮定する。質量は結節あるいは脚の中央部分に集中しているものとする。各質点に関する運動方程式から導出された常微分方程式を連立させ,数値的に解くことで,網地の運動・形状を算定する。定式化は単純であるため計算コードの開発は極めて容易である。算定結果は3次元描画アプリケーションソフトを利用して視覚化できるように工夫した。網地を描画している線分の色彩は作用している張力の強度によって変化するように設定した。こうして表現された網地の時間的変化は経時的にモニター上に描画するようにした。任意の時刻での画像を停止させ,様々な角度から視点を変化させて観察できるようにした。さらに網地上の任意の結節部位に作用する張力やその座標位置を画面上に数値として表し,これらを定量的に把握することも可能である。計算用モデルの妥当性を検討するため縦34目,横55目の長方形をした平面網地の定常流中での形状変化を計算し,水槽実験結果と比較した。網地は上辺と下辺の端部を固定し,0.01sステップごとの形状を計算するのに平均約3秒を要した。平衡状態での網地形状は計算結果と非常に良く一致し,計算モデルの有効性が確認できた。さらに算定結果を3次元的に視覚化することで極めて効率的に算定結果を把握できることが確認された。当該年度の目標であった網状構造物の形状・運動を計算機により推定するシステムの骨格部分を構築することができた。
|