群体性微細緑藻Botryococcus brauniiは光合成により固定した二酸化炭素を、大量の液状炭化水素に変換、蓄積するため、再生産可能なエネルギー資源としての利用が考えられている。本藻種には炭化水素として脂肪酸由来の直鎖状のalkadiene、alkatrieneを生産するA品種、トリテルペンであるbotryococcene類およびスクアレン誘導体を生産するB品種、テトラテルペンであるlyopadieneを生産するL品種の3品種があり、これらの中で炭化水素の質および含量の点からエネルギー資源として最も有望なのはB品種である。本藻種による有用炭化水素生産を行うためには、炭化水素合成酵素遺伝子に関する知見を得ることが必要である。そこでB品種であるBerkeley株からトリテルペン合成酵素遺伝子の探索を試みた。 前年度までにBerkeley株から作成されたcDNAライブラリーのスクリーニングにより得られた遺伝子は、スクアレン合成酵素に存在する5つの活性ドメインの内、4つまでを保持していた。そこでこの遺伝子をpET11ベクターに導入し大腸菌内で発現させた。この大腸菌のホモジネートを用いてスクアレン合成酵素およびbotryococcene合成酵素活性を測定したが、目的のタンパク質が封入体画分に存在していたため、いずれの酵素活性も検出できなかった。そこでpET32ベクターを用いてチオレドキシンとの融合タンパクとして本遺伝子を発現させたところ可溶性タンパク質が得られたが、botryococcene合成酵素活性は示さなかった。これは原核生物内では活性の発現に必要なタンパク質の修飾が行われないためであると考えられた。そこで現在、本遺伝子の酵母での発現を試みている。
|