研究概要 |
魚類普通筋ミオシン軽鎖は,電気泳動における分子量の違いから,高等脊椎動物と同じパターンを示す白身魚グループ(A1軽鎖>DTNB軽鎖>A2軽鎖),カツオ,マサバ等サバ科グループ(A1軽鎖>A2軽鎖>DTNB軽鎖)およびイワシ類・アジ類のグループ(A1軽鎖>A2軽鎖≒DTNB軽鎖)に分けられ,特に低分子の必須軽鎖(A2軽鎖)における種特異性が大きいことがすでに報告されている.このような種特異性の背景を探るために,各種魚類ミオシン軽鎖のcDNAクローニングを行い,それらの全一次構造を決定したところ,A2軽鎖のN-末端側の構造に魚種間で顕著な相違があることを演繹されるアミノ酸配列から明らかにした. そこで,すでに一次構造を決定した魚種(トビウオ,シログチ,カツオ,マサバ,マイワシ,マアジにつき,大腸菌を用いてまず発現ミオシンA1およびA2軽鎖の精製を試みた.その結果,トビウオおよびシログチなどの白身魚のミオシンA1およびA2軽鎖はともに効率よく大腸菌によって発現されるが,サバ科やイワシ・アジ類などにおいては発現効率が極めて悪いことがわかった.その原因については目下詳細な検討を行っている最中である. つぎに,発現タンパク質として精製できたシログチ・ミオシンA1軽鎖およびA2軽鎖を用いて,別に調製したスケトウダラ・ミオシンとの間でハイブリダイゼーションを行い,ハイブリッド・ミオシンの調製を行った.その結果,得られたスケトウダラ・ミオシン重鎖-シログチ・ミオシンA1軽鎖によるハイブリッド・ミオシンとスケトウダラ・ミオシン重鎖-シログチ・ミオシンA2軽鎖によるハイブリッドミオシンとの間に熱安定性の相違があることを見出した.現在,ハイブリッド・ミオシンの安定性におけるミオシン軽鎖のモル濃度依存性を調べている.
|