本研究は、寒天の分子量分布がゲル形成にいかに影響をおよぼしているのかを明らかにしようとしているものである。そこで、平成12年度は、分子量分布を制御をした試料の調製を行うことを目的とした。 寒天は、原藻をスサビノリPorphyra yezoensisとする兵庫県産の干海苔から抽出した。まず、分子量分布を制御するためには、様々な分子量種の画分が必要となるため、収率が高く且つ、できるだけ分子量の大きい画分が得られる条件の検討を行った。すなわち、抽出前の水酸化ナトリウムによる化学修飾を行うときの、水酸化ナトリウム濃度および反応温度の検討を行うために、水酸化ナトリウム濃度と反応温度を組合せて8通りの抽出を行った。その結果、6条件において6〜14%の収率で寒天を得ることができた。なお、寒天の同定は、フーリエ変換赤外分光法による寒天の特性吸収波長との一致により確認した。次に、各反応条件から得られた寒天の分子量を推定するため、希薄溶液粘度測定を行った。その結果、分子量が3×10^5を超える画分が得られることが期待できる極限粘度数が得られた。 今後は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを行い、比較的極限粘度数の大きかった寒天の分子量分布を調べ、各分子量種の含量の差が狭い寒天が得られた反応条件を分子量分布を制御した寒天を得るための抽出条件と決定し、試料調製およびゲル構造を調べていく。
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