後鰓類のアメフラシAplysia kurodaiがアルブミン腺に持つ抗菌・抗腫瘍タンパク質 アプリシアニンAは、様々な菌に対して抗菌・抗腫瘍活性を示し、他の抗生物質と比較して低モル濃度で作用することが報告されている。現在までにcDNAがクローニングされていおり、アミノ酸配列の相同性検索の結果、アフリカマイマイの抗菌タンパク質アカシンと相同性を持っていた。これらの抗菌活性は、ApAが静菌的であるのに対しアカシンは殺菌的であると報告されている。そこで本研究では、ApA遺伝子を連結した発現ベクターを大腸菌に形質転換して、組換えApA(rApA)を発現させ抗菌活性について検討した。発現したrApAは大部分が沈殿に見られたので、可溶化後、再活性化したところ、rApAの天然ApAと同程度の濃度で抗菌活性が見られた。しかし、ApAは殺菌的に作用したのに対し、rApAは静菌的に作用した。そこで、rApAには何らかの補助因子が欠けていると考え、ApAのアミノ酸配列に相同なタンパク質を検索を行ったところ、強力な殺菌作用を持つ過酸化水素を産生するL-アミノ酸酸化酵素(LAO)と相同性を持つことが分かった。この酵素は補酵素としてFADを持つ事により酸化酵素として働くことから、rApAが静菌的に作用したのはrApAではFADを持っていないためであると考えられた。ApAについてFADの有無およびLAO活性を測定したところ、ApAはFADを持ち、LAO活性を持っていた。また、ApAの殺菌作用はカタラーゼにより部分的におさえられるので、ApAはH_2O_2を産生じて殺菌作用を示すと示唆された。次に、FADを持つrApAを得るために、室温でrApAを発現させて可溶化したrApAを得たところ、LAO活性を持つrApAが得られた。
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