研究概要 |
抗菌・抗腫瘍タンパク質アプリシアニンA(APA)は抗生物質に較べ10倍以上高い活性を持つが、その活性については明らかにされていなかった。近年、APAのアミノ酸配列が決定され、低いながら全体的な相同性をもつタンパク質としてL-アミノ酸酸化酵素(LAAO)が存在することがわかった。この酵素はL-アミノ酸を基質として過酸化水素を発生させる酵素であり、産生された過酸化水素により抗菌作用や抗腫瘍作用が発現される。その活性中心にはフラビンアデニンジヌクレオチドを持っている。そこで、APAの機能を検討する第一段階として、APAを発現させることを検討した。APA遺伝子をもつ発現プラスミドを作成し大腸菌BL21star(DE3)を用いて、リボフラビンを含む培地で培養した。室温で培養を行ったところ、可溶画分に組換えAPA(rAPA)が発現された。得られたrAPAについて、D-およびL-フェニルアラニンを用いてLAAO活性を測定を行ったところ、D体では過酸化水素が発生せず、L体で過酸化水素の発生が見られることがわかった。また、枯草菌Bacillus subtilisを用いて50%増殖阻害濃度を測定したところ、APAでは12.6μg/ml, rAPAでは9.6μg/mlであり、同様な活性を有していることが分かった。したがって、APAと同等の活性を持つrAPAを大腸菌で発現させることに成功した。しかし、典型的な実験でのrAPAの収量は1Lの培養液あたり0.2mgであり、大量に得ることはできなかった。主な原因として、rAPAを発煙させる際に、ほとんどのrAPAが不溶化することが挙げられる。これは大腸菌で外来タンパク質を発現させるとしばしば起こる現象であり、不溶部分の再活性化も検討したが、活性を持つrAPAを得ることはできなかった。従って、大量発現を目指すためには、昆虫細胞系を用いて実験を行う必要があると考えられる。
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