本年度は前年度の引き続きで中国・韓国・台湾の農業・農村調査を行い、そのうち台湾の流通システムおよび産銷班の実態調査が中心となった。以下では、その研究内容を紹介する。 1970年代から台湾政府は、都市部への青果物供給の安定化のために農協などの農業団体による共同運銷事業(卸売市場向けの団体出荷)とその受け皿としての産銷班の育成に力を入れてきた。 産銷班は農家による技術習得を伴った共同出荷組織のことである。青田買いを含む「中盤商人」(集出荷商人)による買付と消費地への供給という伝統的な青果物流通体系を近代化するために、台北卸売市場の近代化と対になって農会などの農業団体による共同運銷が実施され(セリ取引の成立)、その産地組織として増加を示してきた。 産銷班に関する研究は日本では全く行われていないが、台湾においても規範論的、ないしは実務的な研究に限られており、その実態は必ずしも明らかではない。また、農業団体サイドからの評価は極めて低く、それは産銷班の形成が補助金目的であるとか、農業団体との契約不履行が目に付くなどの現実があるからである。しかしながら、産銷班はすでに産地に根をはった存在であり、なおかつ台湾市場の過剰化と価格低迷、大規模量販店や大口需要者の台頭という青果物流通構造の変化のなかで、産銷班の性格自体も変化を見せつつあり、新たな出荷組織の機能を果たしていることは否定できない。
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