本研究の目的はインフォーマル金融とフォーマル金融との相互作用を明らかにすることである。すなわち、インフォーマル金融の存在がフォーマル金融機関の資金回収率および資金需要に与える効果、また、フォーマル金融プログラムの導入・拡大によるインフォーマルな金融取引への影響について考察することを最終的な目的としている。本年度はその準備段階として、バングラデシュの2カ村(コミラ県G村、ボグラ県T村)での調査データ(1996、98、99年)を整理するとともに、2001年1月に同じ2カ村で再調査を実施した。 1998年までのG村での調査結果からは、(1)インフォーマルな金融取引における主要な資金余剰主体は上位貧困層(the upper poor)であり全体として資金は貧困層から富裕層へと流れていること、(2)インフォーマルな貯蓄信用講は農村住民にとって消費の安定化をはかるだけでなく新しい投資(G村の事例では海外出稼ぎ)機会を享受するためにも貢献していること、などが明らかになっていた。 本年度、1999年のT村での調査データを整理することにより、上の2点に関してはG村と同じ傾向がT村でも見られることが分かった。その一方で、非農業部門の発展度の差によって、資金の投資先やフォーマル金融のパフォーマンスに相違点が見られることも明らかになりつつある。非農業部門の発達したG村では富裕層には離農傾向が見られるのに対して、非農業部門が未発達のT村では富裕層の多くは農地を集積し経営規模を拡大している。T村でのマイクロファイナンス事業のパフォーマンスは思わしくなく、借手が多重債務に陥っている状況も見られた。 2001年1月に実施した現地調査では、農村部での農業・非農業の収益率を把握するためのデータ収集を行った。現在、そのデータの整理を行っているところである。
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