研究概要 |
本研究の目的は,不足払い制度が撤廃され生乳価格の不確実性が危惧される現在,酪農経営安定対策が酪農経営のリスク回避行動にいかなる影響をあたえるか,計量経済学的に分析することであるが,本年度は,以下の諸点が明らかとなった. (1)ジョイント分析の比較検討の結果,推計及び結果解釈の容易さの観点から,平均-分散モデルに基づく中島(2000)の方法が応用上非常に有用であることが明らかとなった. (2)中島の方法を基に酪農経営の意思決定モデルを構築し,牛乳生産費を主たるデータとしつつ酪農経営のリスク選好を分析した結果,酪農経営が生乳価格の変動に対してリスク回避的であることが確認された. (3)酪農経営が潜在的に支払ってもよいと考える保険価格(生乳1単位あたりの保険プレミアム)を推計した結果,年々その値が上昇し,小規模経営の方が相対的に高い値を示すことが明らかとなった. (4)生乳価格の変動に対する生乳供給反応(弾力性)を推計した結果,年々その反応が大きくなってきていること,及び,小規模経営の方が相対的に大きく反応することが明らかとなった.さらに,上記供給反応の農区間比較分析の結果,小規模経営については北海道の方が相対的に大きく反応するが,それとは逆に,大規模経営については都府県の方が相対的に大きく反応し,北海道と都府県とでは酪農経営のリスクへの対応が異なることが明らかとなった.
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